知的財産法 後期第6回
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学習の目的:前回、特に商標法4条1項11号の登録要件につき、その商標の類否判断の方法を説明しました。今回はさらに他の登録要件を説明します。たとえば、商標法4条1項15号における判断について学習し、11号との関係を考察します。
本日の課題:これまで、商標の登録要件を学びましたが、以下のような場合、どのように扱われるべきでしょうか、商標法の登録要件、異議理由、無効理由を考慮して考えてみましょう。
A社は、ベンチャー企業。ドローンを開発している。新開発のドローンは、これまでの製品より速く飛び、航続距離も長い。
A社は、この新ドローンに、「スピーダーロング」と名付け、これを見本市などに出品していた。業界ではその性能の高さに驚きと称賛が与えられていた。B社もまた、ドローン開発を行っており、見本市にてA社と隣のブースで、自社製品を展示していた。
両社は、ライバル企業ではあるが、同業者団体の交流会等で交流があり、情報交換等はしている。「スピーダーロング」は業界で話題となってそこそこ知られている。そんな中、B社は、A社が「スピーダーロング」につき商標登録をしていないことを知り、商標登録は、先願主義だからと先に出願し、登録してしまった。このようなB社の行為に対し、A社はどのような対応が可能であろうか。
なお、特許法では、他人の発明を盗用して出願した場合、特許を受ける権利を有しない者の出願・いわゆる冒認出願として、拒絶理由・無効理由となっています。
これに対し、商標法では、商標登録を受ける権利というものは存在せず、出願により初めて「商標登録出願により生じた権利」というものが生じます。そのため、商標登録出願により生じた権利を有しない者の出願という事態はありえません。一方、同じ商標を使用している者が複数存在する場合、先に出願した者が登録を受けられます(先願主義)。
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軽井沢浅間高原ビールは、軽井沢高原ビールに類似しないものとして、登録された。
登録後、商標法4条1項11号又は同項15号に該当するものであるから,同法46条1項1号により,その登録を無効にすべきものであるとの無効審判請求がなされた。この請求につき、どのように判断されるべきか、回答せよ。
商標法4条1項11号については、前回の授業で説明したので、今回は同項15号について説明します。
商標の機能・・自他商品識別機能・・出所表示機能
この機能が阻害されてはならない。
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参考:商標法4条1項10〜14号
十 他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの
十一 当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(第六条第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品又は役務をいう。以下同じ。)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの
十二 他人の登録防護標章(防護標章登録を受けている標章をいう。以下同じ。)と同一の商標であつて、その防護標章登録に係る指定商品又は指定役務について使用をするもの
十三 削除
十四 種苗法(平成十年法律第八十三号)第十八条第一項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であつて、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用をするもの
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平成6年改正で、TRIPS協定23条2及び24条9に対応して新設された。TRIPS協定23条2は、世界貿易機関の加盟国に対し、ぶどう酒又は蒸留酒の地理的表示に関する商標登録出願が、その地理的表示の示す原産地と異なるものについてされた場合は、拒絶又は無効とすることを義務づけている。TRIPS協定24条9は、加盟国は、原産国において保護されていない地理的表示を保護する義務を負わない旨規定されている。本号はこれらに応じた規定。
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主として、外国で周知な商標について外国での所有者に無断で不正の目的をもってなされる出願・登録を排除すること、
さらには、全国的に著名な商標について出所の混同のおそれがな くても出所表示機能の稀釈化から保護することを目的とする
「周知性」を要件としたのは、使用に 基づく一定以上の業務上の信用を獲得していないような商標であって未登録のものについて他人が出願した場合に、「不正の目的」があるからという理由だけでこの出願を排除することとするのは、商標の使用をする者の業務上の信用 を維持することを目的とし(一条)、かつ先願登録主義を建前とする(八条一項)我が国法制の下では適切ではないからである。
「不正の目的」とは、図利(トリ)目的・加害目的をはじめとして取引上の信義則に反するような目的のこと。不競法19条1 項2号でいう「不正の目的」と同じ。
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先願主義
第八条 同一又は類似の商品又は役務について使用をする同一又は類似の商標について異なつた日に二以上の商標登録出願があつたときは、最先の商標登録出願人のみがその商標について商標登録を受けることができる。
2 同一又は類似の商品又は役務について使用をする同一又は類似の商標について同日に二以上の商標登録出願があつたときは、商標登録出願人の協議により定めた一の商標登録出願人のみがその商標について商標登録を受けることができる。
3 商標登録出願が放棄され取り下げられ若しくは却下されたとき、又は商標登録出願について査定若しくは審決が確定したときは、その商標登録出願は、前二項の規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。
4 特許庁長官は、第二項の場合は、相当の期間を指定して、同項の協議をしてその結果を届け出るべき旨を商標登録出願人に命じなければならない。
5 第二項の協議が成立せず、又は前項の規定により指定した期間内に同項の規定による届出がないときは、特許庁長官が行う公正な方法によるくじにより定めた一の商標登録出願人のみが商標登録を受けることができる。
拒絶理由
第十五条 審査官は、商標登録出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その商標登録出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
一 その商標登録出願に係る商標が第三条、第四条第一項、第七条の二第一項、第八条第二項若しくは第五項、第五十一条第二項(第五十二条の二第二項において準用する場合を含む。)、第五十三条第二項又は第七十七条第三項において準用する特許法第二十五条の規定により商標登録をすることができないものであるとき。
二 その商標登録出願に係る商標が条約の規定により商標登録をすることができないものであるとき。
三 その商標登録出願が第五条第五項又は第六条第一項若しくは第二項に規定する要件を満たしていないとき。
登録異議理由
第四十三条の二 何人も、商標掲載公報の発行の日から二月以内に限り、特許庁長官に、商標登録が次の各号のいずれかに該当することを理由として登録異議の申立てをすることができる。この場合において、二以上の指定商品又は指定役務に係る商標登録については、指定商品又は指定役務ごとに登録異議の申立てをすることができる。
一 その商標登録が第三条、第四条第一項、第七条の二第一項、第八条第一項、第二項若しくは第五項、第五十一条第二項(第五十二条の二第二項において準用する場合を含む。)、第五十三条第二項又は第七十七条第三項において準用する特許法第二十五条の規定に違反してされたこと。
二 その商標登録が条約に違反してされたこと。
三 その商標登録が第五条第五項に規定する要件を満たしていない商標登録出願に対してされたこと。
無効理由
第四十六条 商標登録が次の各号のいずれかに該当するときは、その商標登録を無効にすることについて審判を請求することができる。この場合において、商標登録に係る指定商品又は指定役務が二以上のものについては、指定商品又は指定役務ごとに請求することができる。
一 その商標登録が第三条、第四条第一項、第七条の二第一項、第八条第一項、第二項若しくは第五項、第五十一条第二項(第五十二条の二第二項において準用する場合を含む。)、第五十三条第二項又は第七十七条第三項において準用する特許法第二十五条の規定に違反してされたとき。
二 その商標登録が条約に違反してされたとき。
三 その商標登録が第五条第五項に規定する要件を満たしていない商標登録出願に対してされたとき。
四 その商標登録がその商標登録出願により生じた権利を承継しない者の商標登録出願に対してされたとき。
五 商標登録がされた後において、その商標権者が第七十七条第三項において準用する特許法第二十五条の規定により商標権を享有することができない者になつたとき、又はその商標登録が条約に違反することとなつたとき。
六 商標登録がされた後において、その登録商標が第四条第一項第一号から第三号まで、第五号、第七号又は第十六号に掲げる商標に該当するものとなつているとき。
七 地域団体商標の商標登録がされた後において、その商標権者が組合等に該当しなくなつたとき、又はその登録商標が商標権者若しくはその構成員の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているもの若しくは第七条の二第一項各号に該当するものでなくなつているとき。
2 前項の審判は、利害関係人に限り請求することができる。
3 第一項の審判は、商標権の消滅後においても、請求することができる。
4 審判長は、第一項の審判の請求があつたときは、その旨を当該商標権についての専用使用権者その他その商標登録に関し登録した権利を有する者に通知しなければならない。
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